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経営者の方へ(社外役員・顧問弁護士)

経営者の方へ(社外役員・顧問弁護士)

 

社外役員の役割

一部企業があくなき利益を追求する中で、深刻な公害を発生させるなど企業活動が社会に大きな歪みをもたらす場合があり、また世界が持続的な社会の発展を希求するようになっている中で企業の社会的責任(CSR)が問われる時代になっています。そのような社会の流れを受けて、会社が、株主をはじめ顧客、従業員、地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定をおこなうための仕組みとしてのコーポレートガバナンスコード(会社統治の原則)が打ち出され、上場企業はこの原則に則って企業活動をするようになっています。そのコードにおいて「独立社外取締役の有効な活用が求められており(原則4-8)」、現在ではほとんどの上場企業には社外役員がおり、多くは複数の社外役員が就任しています。

ところで、私は、以下の理由から上場企業・大企業は当然のこと中小企業においても弁護士を独立社外役員として迎え入れることは会社の発展にとって極めて有用だと思うようになっています。

 

法律に則った会社の運営

我国の中小企業の多くが、会社法を中心とする法律の規定とは掛け離れた会社の運営がなされているように思います。例えば、取締役会設置会社でありながら、取締役会を開催したことがない、酷い場合は、株主総会さえも実際には一度も開催したことはなく、開催していない株主総会を開催したことにして、議事録を作成し役員の登記している会社が少なくありません。そのような登記を許している日本の専門家にも大いに問題があると思っています。

中小企業の役員間、あるいは同族会社における兄弟間の争いの多くの場合において、本来取締役会決議事項とされている事柄について取締役会の承認を経ていない、実際には株主総会さえ行われて来ていなかった等の会社法における手続き違反による無効の主張されています。そして、その多くにおいて、争いが生ずるまでは、その手続き違反を問題としてこなかった当事者によってその無効が主張されているのです。しかし、過去に会社法違反の事実を了解していた事実が認められたとしても、その事実をもって無効原因が治癒されると判断されることはほとんどなく、手続き違反を理由に違反行為は無効あるいは取締役の賠償責任が認められています。こうした無用の争いを避けるためにも中小企業こそ法律に基づいたガバナンスが求められるのではないでしょうか。そのためには、弁護士を社内役員として迎え入れることにメリットがあると考えます。

 

バランスの取れた経営

会社再建に携わった経験のある弁護士が会社役員として関与することは法の支配の貫徹以外の面においてもメリットが多いと思います。例えばワンマンな経営者は、他人の意見を聞かず方向性を見誤る場合がありますが、ワンマンな経営者に対しては、他の役員や従業員はなかなか意見が言えないと思います。しかし、ワンマンな経営者も経験豊富な弁護士の助言を無視することは出来ないと思います。なぜなら、弁護士を独立社外役員として会社に迎える場合、弁護士は就任に際して、経営者が法律及びコンプライアンスを遵守することを条件に就任を承諾するのが一般ですので、弁護士に就任要請を依頼する経営者は、少なくてもそれだけの覚悟と自覚を持っていると解されるからです。その意味では、弁護士に独立社外役員として参加を求める以上、弁護士の助言には真摯に耳を傾ける覚悟が必要であり、またそのことを前提に弁護士を役員に選任する必要があります。私の経験でも独立社外役員を採用している企業は、役員全体に社外役員の意見に謙虚に耳を傾け、取り入れるべきものは取り入れる努力をしているように思います。社外役員の参加の意義は多義に亘りますが、経営者が社外から人を入れてその専門家の意見を聞くことは、会社が多様性を持つことになり、企業価値を高め会社の持続的発展に繋がると思います。

 

社外役員と顧問弁護士の違い

社外役員と顧問弁護士の違いは、上述の内容からある程度ご理解いただけると思います。社外役員も顧問弁護士も法律に則った会社運営、会社の持続的な発展を願うことは同じですが、顧問弁護士はあくまでも会社に対して助言するのが原則なので、通常は会社代表者(経営者)の利益に沿って物事を考え助言します。したがって、会社の代表者がワンマンな経営をしていても顧問弁護士がそれを積極的に忠告することは一般にはありませんし、顧問弁護士は、通常(相談がなければ)会社の経営に深く関与することもありません。したがって、会社の方向性やその社会的責任について助言することも一般には行っていません。また、会社が会社法等の法律に則った運営がなされているかについて積極的に調べて、それがなされていない場合にその是正を求めるようなこともしないのが一般です。顧問弁護士は、基本的に(顧問契約の内容にもよりますが)、会社(多くの場合代表者)から相談(多くの場合は法律問題)を受けた場合にそれに対して法的助言を行うのが主な業務となっているからです。それに対して、社外役員は、その職責(取締役、監査等委員会設置会社にあっては監査委員たる取締役、監査役、理事、監事等)に応じて独立した専門家の立場から会社に関与するものであり、場合によっては(代表者が違法行為等をおこなっていれば)、代表者とも対峙する場合もあるのです。

この職務内容の違いから、一人の弁護士が複数の会社、個人の顧問弁護士に就任しているのが一般的ですが、独立役員の場合は、その職責を全うするためには、同時には2社ないし3社の社外役員に就任するのが精一杯だと思います。

 

思い出に残る会社事件

取締役会の決議が争われた事件
⑴取締役会の決議事項である業務執行について、代表取締役が取締役会の承認なく行って会社に損害が生じたとして代表取締役の責任が認められた事件

取締役会設置会社においては、重要な業務執行の決定は、取締役会の承認を必要とします。「重要な財産の処分及び譲受け」は、取締役会の決議事項となっています(会社法362条4項)。重要な財産の処分について、取締役会の承認を経ることなくおこなったとして、株主代表訴訟によって代表取締役社長に多額の損害賠償責任が認められた事案です。

代表取締役は、当該行為は、重要な財産の処分に該当しない、事実上取締役会の承認を得ている、取締役会の事後承認を得た等を理由に争いましたが、いずれの主張も認められませんでした。株主代表訴訟の当事者は、元会社の取締役で取締役会にも出席していましたが、その事実は代表取締役の責任を否定する理由にはならないとされました。一緒に役員をしていた仲間に裏切られ株主代表訴訟を提起され、損害賠償責任を負うことがあることを示す事案でした。

 

⑵役員保険の受取人の変更が取締役会の承認を経ずに行われたとして争われた事件

役員が死亡した場合に保険金が支払われる役員保険について争われた事件でした。同族会社の役員の一人が死亡し受取人となっていた配偶者が保険金を受領した後、1年以上経過した後、同保険の受取人は、取締役会の決議を経ることなく会社から個人に変更されたとして、会社から役員の配偶者に対して保険金の返還請求がなされた事件です。

この事案も事実上役員全員が受取人の変更について知っていた(認めていた)事案でしたが、取締役会の承認手続きは経ていませんでした。死亡した役員に対する退職金の一部返還も併せて求められた事案でした。役員の死亡後に家族間に争いが生じたことが紛争の原因でした(争いの本質は「嫁姑の争い」に思えましたが、このような家族間の確執が会社経営に持ち込まれることは、我国の中小企業では良くみられるように思います。)。この事件は、最終的には、配偶者が相当額を会社に返還する内容での和解が成立しましたが、考えさせることの多い事件でした。