忘れられない民事事件

忘れられない民事事件１

不在地主の土地の帰属が問題となった事件

私が弁護士になった頃の事件でもあり、忘れられない事件の一つになっています。自作農創設特措置法も問題となった事案でした。いわゆる農地改革により不在地主の土地が国に収用されましたが、その土地の帰属が問題となった事案でした。不在地主であった依頼者の所有していた土地の一部が、耕作に適していいないということで、収用の対象から外れたのですが、その後当該土地の所有権を巡って争われた事案でした。広大な土地であり財産的価値も大きな事件でしたが、相手が地方公共団体でもあり、また事件から時間が経過していたこともあって難しい事件でした。控訴審から受任し、最高裁まで争った事案でした。弁護士としての経験を積んだ今ならもっと闘いようがあったと思う案件でもあり、今でも悔いが残る事件でもあります。

忘れられない民事事件２

風変わりな老人の大事件

風変わりな老人の事件でした。後でこの老人は大金持ち（推定資産数十億円）であったということが分かったのですが、信じられないほどの吝嗇でした。そのため、電気代やガス代を滞納して電気やガスを止められ、結局栄養失調で入院していました。その老人は、一度結婚したことがありましたが、妻、子に生活費を渡すのが勿体無いということで、子どもが産まれて直ぐ離婚しその後生涯独身を通した人でした。周りの人が老人の財産を求め、自分に有利な遺言を書いてもらおうと努め、また我が子を養子に入れようとした事件でした。結局、亡くなる数日前に縁組した養子縁組の有効性を巡って、実子と養子との間で争われた事件が訴訟の中心でした。

私は、その老人に何故か生前可愛がられ、その愛嬌のある言動は今でも忘れることが出来ません。資産があることとそれを使える能力とは全く別のものであることを教えられた事件でもありました。また、相続財産の紛失の虞がある場合は、保全的意味で相続財産管理人が選任される場合があることを知ったのもこの事件でした。お金を巡る人間の欲望の凄まじさを見た事件で、弁護士として駆け出した私に取って色々な意味で忘れられない事件になっています。